An Unfinished Archive
記録とは、常に後から意味を与えられるものである。 撮影された写真も、書かれた文章も、その瞬間においては目的や評価を持たず、ただ発生した事実として存在している。意味や価値は、その場では決定されない。 多くの記録は、後に整理され、解釈され、物語の中へと回収されていく。理由や背景が与えられ、分かりやすい結論へと収束させられることで、ようやく「理解されたもの」として扱われる。しかし、その過程で失われるものもまた多い。 このプロジェクトは、そうした未完成の状態に留まる記録を扱っている。観察や調査の途中で生まれた断片、説明しきれなかった感覚、定義するには早すぎた思考。それらを完成させないまま、あえて並べている。 編集は行われるが、物語化はされない。構造は与えられるが、意味の方向性は固定されない。文脈は提示されるが、結論は用意されない。ここにあるのは、理解を促すための装置ではなく、読み手が立ち止まり、滞在するための環境である。 記録は保存されるが、評価は行われない。重要度の序列も設けられない。何が正しく、何が不要かといった判断は、このアーカイブの外部に委ねられている。 それらがどのように読まれ、どのような意味を持つかは、時間と読み手に委ねられている。この場所は、その変化を妨げないために、未完成のまま維持され続ける。